理事長挨拶

代表取締役理事長
片上 慶一

(株)国際経済研究所は、国際経済情勢の調査・研究や国際交流活動を推進する機関として、トヨタ自動車が中心となって1983年に設立されました。当時は、日本の貿易黒字が拡大し、自動車産業界は日米通商摩擦への対処を迫られる中で、現地生産へのシフト、事業のグローバル化へと舵を切り始めた時期でした。その後、トヨタ自動車の海外事業展開に呼応し、弊所も米国から欧州、アジア、他新興国へと研究対象地域を拡大してまいりました。

現在、トヨタは20数ヶ国/地域に生産事業体を展開し、170ヶ国/地域以上でトヨタ車を販売するまでに至りましたが、今日のグローバル経済・社会は複雑に絡み合い、或るところで起きた問題が、瞬く間に世界を駆け巡り、他の地域や世界経済全体にも大きな影響を及ぼしかねない時代となっています。また、リベラルな国際秩序が深刻な脅威に直面している現下の状況の中、この度の新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、国際社会は新たな課題に直面し不透明感が増しています。

弊所は、米・中・欧などの政治経済動向・見通し、主要新興国・地域の中長期的な経済・産業・社会展望、並びに環境・エネルギー・将来モビリティ・産業政策・企業戦略などグローバルな視点での足で稼ぐ調査研究に取り組み、トヨタ並びにトヨタグループの中長期事業計画や経営判断に資するよう、新たな視点や柔軟な発想で未来につながる価値の提供に努めてまいります。
また、国際交流並びに相互理解活動を通じて、トヨタやトヨタグループひいては日本の企業が各国各地域の一員として事業活動を行い、地域・社会とともに発展していく一助になればと存じます。
今後ともご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

参考資料
*「決断―私の履歴書」:故豊田英二・元トヨタ自動車(株)最高顧問
<日本経済新聞社1985年出版>235ページより抜粋

『技術開発を目的とした中研を設立した時、同時にシンクタンクというか、文科的なことを研究する機関も必要であるという話もあった(...略...)五十七年七月年に自工、自販が合併し、トヨタ自動車の将来を見直したとき、懸案となっていた文科的な研究機関も必要との結論に達した。(...略...)トヨタの仕事はグローバルに広がっているので、研究機関の名称は「国際経済研究所」とした。』

決断―私の履歴書
出版社:日本経済新聞社
発売日:1985/09
*「未来を信じ一歩ずつー私の履歴書」:故豊田章一郎・トヨタ自動車(株)名誉会長
<日本経済新聞2015年出版>179ページより抜粋

『日本車が日米の貿易摩擦の俎上にあがっていた1981年、私と山本重信さん(元副会長、元通産次官)で日米の自動車産業当事者と有識者・オピニオンリーダーに呼びかけ、日米の自動車問題の調査研究会と政策委員会をスタートさせた。(...略...) トヨタも経済関係を中心に国際情勢の調査・分析を進めるため、83年にトヨタ全額出資の株式会社国際経済研究所を設立し、理事長に牛場信彦氏(元対外経済産業相)、副理事長兼所長に元西独大使の吉野文六氏に就任して頂き、(...略...)』

未来を信じ一歩ずつ : 私の履歴書
出版社:日本経済新聞社
発売日:2015/08